何気ない日常の中で、お線香や畳の匂い、雨の匂いをかいだとき、子どもの頃のなつかしい思い出や田舎のおばあちゃんの家を思い出したり、シャンプーや香水の香りから、昔の恋人のことを思い出したり…など。
その場に漂う香りをきっかけに、胸があたたかくなったり、甘酸っぱい思い出がよみがえったりした経験はありませんか?
疲れているときやイライラしているとき、自分の記憶の中にあるなつかしい香りを感じると、不思議と心と体の緊張がふっと緩んでくれる瞬間があることを、あなたも一度は経験したことがあると思います。
今回は、そんなリラックス効果抜群の「懐かしさのある心地よい香り」をもつ、お香をご紹介します。
目次
どうしてお香でリラックスできるの?
香りをかぐことで、人はリラックスしたりリフレッシュすることができますが、それにはちゃんとした理由があることをご存知ですか?
人は触覚や聴覚などの五感を持っていますが、その中でも、さまざまな香りを感知する「嗅覚」が唯一、本能にダイレクトに作用するということがわかっています。
香りの成分は鼻から嗅覚神経を通り、直接、大脳辺縁系に伝えられており、その大脳辺縁系には昔の記憶や喜怒哀楽に深く関わっている海馬と偏桃体があります。
いわば、食欲などの本能行動をつかさどっている部分にダイレクトに香りが影響しています。
そのため、香りをかぐと本能的な行動や感情に直接働きかけ、なつかしい記憶がよみがえったりするのです。
お香の香り成分で自律神経の調整や免疫力を高めてくれる!
さらに大脳辺縁系に送られた香り成分は、さらに視床下部や脳下垂体へと伝えられます。
ここでは自律神経やホルモンの分泌調整・免疫などをつかさどっており、この視床下部や脳下垂体が刺激を受けると、
- 自律神経の調整
- ホルモン分泌
- 免疫力を高める
などの働きが見られます。
好きな香りや心地よい香りをかぐと反射的にリラックスしたり、体調がよくなったり、ストレスが軽減される理由はここにあったのです。
お香でリラックス!お香が持つ癒し効果とは
わたしたち日本人は、昔から季節ごとにさまざまな植物を使って香りを楽しんできました。
例えば、12月の冬至に入るゆず湯や、5月の端午の節句に入る菖蒲湯などが有名です。また、春先にはヨモギや桜、秋には菊などといった、季節の移ろいに合わせたさまざまな植物の香りと薬効を利用してきました。
これらの伝統的な「和の香り」は、日本人が長い歴史の中で作り上げてきた、日本の四季や環境にふさわしい香りです。
そのため、なつかしさや和を感じさせるお香の香りを楽しむたびに、なつかしさを感じて、心が静まり、リラックスすることができるのですね。
お香は疲れた心と体を優しく癒してくれる!
部屋でお香を焚くと、香りとともに煙がゆらゆらと立ち上っていきますよね。
煙が自然のリズムでゆらめく様子を眺めているだけでも、心と体が癒されるような感覚になります。
お香を焚いた部屋に長くいると、香りが少し弱い気がする…と感じてしまいがちなのですが、仕事から疲れて帰ってきたときなどに、お香の残り香をふわっと感じることができます。
やさしい香りに迎えられると、心と体がほっと安らぎますよ。
リラックス効果の高いお香の香り6選
香り成分の中には、その成分自体にリラックスをもたらす作用をもつものがあります。
現在、店頭にはさまざまなお香が販売されていますが、今回はその中でも日本古来から愛されてきた、懐かしさのある癒しの香りを6つご紹介します。
まずは今回ご紹介する中から、気になる香りをいくつか試してみてはいかがでしょうか?
自分が「本能」で好きだと思った香りこそが、今あなたに必要な最も癒し効果の高いお香ですよ。
白檀(ビャクダン)
お線香やお寺などを連想させる、落ち着きのある香りです。
いろいろな問題を抱えて、気持ちが落ち着かないときや、頭の中がまとまらないと感じた時には白檀の香りを選んでみましょう。
自然と呼吸が深くなり、地に足がついたような感覚を取り戻すことができます。
樟(クスノキ)
やわらかさとともに、さわやかさを感じることのできる木の香りです。
嗅いだ瞬間は、ハッと覚醒するような感覚がありますが、長く穏やかに香らせることで、鎮静効果を発揮します。
ストレスが溜まっているときや、良質な睡眠を取りたいときにお使いください。
黒文字(クロモジ)
落ち着きのある甘さの中に、樹木の穏やかさを感じる香りです。
不安な気持ちを和らげる効果や、緊張感を取り除く効果があり、生理前や更年期などで気持ちが不安定なときにも使える香りです。
周囲との摩擦で心がガサガサしているなと感じたときにも、おすすめです。
月桃(ゲットウ)
清涼感と甘さのある香りで、ユーカリによく似ています。
最近、肩に力が入っているな。窮屈だな。と感じている方には、ぜひおすすめしたい香りのひとつです。
明るく、あたたかい気持ちにさせてくれるので、のんびりとした時間を楽しみたいときなどにどうぞ。
檜(ヒノキ)
ヒノキ風呂の香りは、日本人ならイメージしやすいのではないでしょうか。
どこか懐かしさを感じさせる甘みのある木の香りは、人々に安心感を与えてくれます。
不安が強く、物事に集中できないときに使うといいでしょう。部屋の中の悪臭も取り除いてくれる香りです。
柚子(ユズ)
こちらも有名な香りですね。親しみやすいですが個性的で、老若男女問わず、安心感やぬくもりを感じることのできる柑橘系の香りです。
漠然とした不安感や寂しさを取り除く効果が高いので、自分の居場所を見失いがちなときや、ホームシックになったときに使うと、優しく心を満たしてくれます。
お香にはどんな種類があるの?お気に入りを見つけよう!
お香にはたくさんの種類があります。
ここでは、最も一般的に使用されている火を使用するお香の特徴をご紹介します。
ご自身の好みや、生活スタイル、用途に合わせてお香を選び、自分の心と体を癒してみませんか?
スティックタイプ
スティックタイプは棒状のお香のことです。
約30分~1時間ほど香りを楽しむことができます。お香の細さが一定なので、火をつけてから消えるまで、香りの強さに変化がないので、同じ香りを長時間楽しみたいときに使うのがよいでしょう。
例えば、ご自宅でヨガや瞑想を行うときに使いたいという方には、このスティックタイプがおすすめです。
コーンタイプ
コーンタイプはその名の通り、円錐状の形をしています。
先端に火をつけて使用するため、お香の燃える面積が時間とともに広がっていきます。
そのため、徐々に香りが強くなっていくのが特徴です。燃焼時間は少し短めですが、スティックタイプと違って安定感があり倒れにくく、煙も少なめなので、お部屋でお香を焚くのには最も適しています。
コイルタイプ
コイルタイプは蚊取り線香のような渦巻き状のお香で、燃焼時間が長いのが特徴です。
広い部屋や野外などでお香を楽しみたい方には、こちらのコイルタイプがおすすめです。
おわりに
お香は、香皿や香立てを用意すればすぐに始めることができます。お香を買うとおまけで香立てがついてくるものもありますし、専門店ではもちろんのこと、100円ショップでもさまざまなデザインのものを気軽に購入することができます。
それらのグッスを、自分のお部屋のインテリアに合わせて選ぶのも楽しみのひとつですよね!
好きなデザインの香皿に好きな香りのお香を焚くだけで、自身の持つ不安や焦りといった気持ちをふっと和らげ、優しく穏やかな気持ちへと導くことができます。
日本人が長い歴史の中で愛し続けてきた香りを、日常生活に取り入れてみませんか?
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